「ああっ! お、お姉さま、気持ちいい……」
アンナにフェラチオされて、男優が呻き声を上げる。エプロン姿のアンナは、いやらしい舌使いで男優のおちんちんを弄びながら、自分の乳房を揉みしだいている。
「しかし、アンナちゃんの役って、こんな役ばっかりですね」
撮影を眺めながら、耕平は隣りにいる監督、つまり辻本社長に言った。
「アンナちゃんの場合、ああいう役以外、全部NGなんだよね」
「うへえ」
耕平は、これまでのアンナの主演ビデオを思い出してみる。生徒にセックスを教える女教師、部下を逆レイプする女社長、ファンをはべらして奉仕させるセクシー・アイドル、奴隷男を調教する女王様、捕まえた忍者をセックス拷問で責めて、なんでも白状させてしまう女忍者。
そして今日は、居候の駄目弟に女の扱い方を教えてやる兄嫁の役を演じている。
要するに、強い女ばかりを演じているのだ。男を組み敷いて、自分の快楽の道具にして弄ぶ、そういう役ばかりを選んでいる。
(やはり、男が憎いんだよなあ)
日頃付き人の耕平を邪険に扱うアンナの態度を思い出して、耕平はしみじみとそう思う。
「今まではそれでよかったんだよ。受けてたからさ。売れてたから」
実際、強い女アンナのビデオにはかなり根強いファンがいる。出したら売れるという状態がずっと続いていた。だから社長も、アンナの好みそうなビデオばかりに出演させていたのだ。
「今は売れないんですか」
「飽きられちゃったんだねえ。最近、目に見えて数字が落ちてるんだよねえ」
「まあ、どれ見てもみんな、同じですからねえ」
「だからね、今度はガラッと変えてみようと思って」
「はあ」
「女スナイパーのアンナがね、敵に捕まって、縛り上げられて、レイプされて、泣き叫んで、散々いきまくるの」
「まあ、確かに今までと180度変わりますよね」
「最初は同じ。アンナがね、ナナハンに乗って、44マグナムを撃ちまくるわけ。男たちをバンバン撃ち殺しちゃう」
「迫力あるでしょうねえ」
そのシーンだけだったら、アンナも嬉々として演じてみせるだろうに、と耕平は思う。
「でも、すぐに敵の罠にはまってさ。囚われの身になっちゃうわけよ。で、あとはもう、あんなことされたり、こんなことされたり」
「それを、アンナにOKさせるんですか?」
「耕平ちゃんがね」
「うへえ」
「よろしく頼むよ、期待してるんだから」
アンナが、股間を大きくさせた男優の上に跨る。脚を大きく開き、相撲取りが四股を踏むような姿勢で腰を落としていく。両膝の上に手を置いて、肩をいからせて背筋を伸ばしたその姿勢は、まさに相撲取りそのままだ。
その姿勢を保ったまま、アンナの腰が上下運動を始める。アンナの恥骨が男優の腰に当たって、パシン、パシンと音を立てる。
「ああ、お姉さま。ああ、お姉さま」
アンナに責められて男優が情けない声を上げる。アンナは構わず、ゆったりとした大きなストロークで腰を動かし続ける。
それはまさしく、男をレイプする痴女の姿だった。
「すうっ、オー、イエス! はあっ、オー、イエス!」
見ているスタッフの一人が、洋物ビデオを真似た呻き声をアンナに当てレコしてみせる。もう一人のスタッフも、思わず吹き出しそうになる。
実際、ビデオの中のアンナの動きや表情は、洋物ポルノの女優そのものだ。今すぐ、オー、イエス! オー、イエス! と叫び出しても、誰も違和感を感じないだろう。
とにかくアンナの演技には、日本人好みの可憐さが無い。潤いが無い。男に愛撫され、弄ばれ、こんなに感じてしまってどうしようという、恥じらいの風情が全く無い。
(無理だ)
心の中で、耕平はまた弱音を吐く。
(こんな女に被虐の歓びを教えるなんて、不可能だ)
女はみんなマゾヒストだというのが耕平の持論だった。女はみんな、男に甘えるのが好きだというのがその根拠だった。
例えば、大股でさっさと歩いていく男の後を「もっとゆっくり歩いてよう」と言いながら、必死の小走りで随いていく。きつく叱られて、「だってえ」とふくれてみせる。強引に自分の我が侭を押し付けてくる男に、「もう」と言いながら従っていく。男に思い切り頬をぶたれ、「ごめんなさい」と泣きじゃくる。
そんな風に男に振り回されていることに、ある種の喜びを感じてしまう女性は意外に多い。自分を振り回す男の言動を、自分への愛だと感じてしまう女は決して少なくない。
そんな感覚の延長線上に女のマゾヒズムはある。耕平はそう考えている。だから大抵の女は、うまく調教さえしてやれば立派なマゾヒストに育て上げられる。耕平は、そう思っていた。
だが、アンナにそんなしおらしさは微塵もない。一見強そうな女が、実は甘えん坊だったということもよくあるが、アンナにはそんなところが微塵もない。
男に甘えることを好まない女にマゾヒズムを教え込む。そんなことは不可能だ。耕平は、いっそ泣きたかった。
(サディストに育ててくれというのなら、簡単なんだがなあ)
こっそりと、辻本社長の様子を窺う。できればこの場で詫びを入れて、この仕事から下ろしてもらいたかった。
だが、諦めた。この社長は、そんなことを許してくれる人間じゃない。
「うううっ」
男優が顔をしかめて何かに耐えている。おそらくそれは、快感ではない。情け容赦なく、全体重を掛けて打ち付けてくる、アンナの腰骨が痛いのだ。
一方、アンナはオルガスムスに近付いてきているようだ。必死で歯を食い縛りながら、荒い息を吐きながら、腰の動きをさらに激しくさせていく。
オー、イエス! オー、イエス! 耕平の頭の中で、金髪美女の声が響く。
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