後ろ手に回した優奈ちゃんの両手を縛る。ここからが耕平の腕の見せ所である。
だが、好き勝手なことはできない。ご主人様、お許しくださいと言ったらプレイを止めなければならない。そして、まだSMプレイに対する警戒心を失っていない優奈ちゃんは、いつこのサインを発するか分からない。
だから、耕平は、慎重にも慎重を期して、ことを運ばなければならないのだ。
「ほら、優奈ちゃん、手首を縛ったよ」
「うん」
「ちょっと、外してみて」
「え? 外していいの?」
「ちょっと、やってみて」
優奈ちゃんが、両手をごそごそと動かす。耕平の縄は、優奈ちゃんの両手の周りを二重に巻いただけである。優奈ちゃんはちょっと手首を捻るだけで、簡単に外してしまった。
「外しちゃったよ」
「外れちゃったね。ただ、手首の外側から縛っただけだと、簡単に抜けられるよね」
一体、耕平が何をしたいのか分からず、優奈ちゃんはあいまいにう頷いた。
耕平は、優奈ちゃんの知的好奇心を刺激することにしたのだ。そうすることで、SMへの警戒心を、少しでも鈍らせようという作戦だった。
「だからと言って、これ以上手首を拘束したくないんだよね。手首には動脈とか、静脈とかが表面に近い位置に流れているんで、それを必要以上に圧迫すると、長時間のプレイができなくなるんだ、危ないからね」
また、優奈ちゃんが頷く。
「でも、すぐに解けちゃうような縛りもしたくないんだ。で、どうするかと言うと、あ、もう一度背中に手を回してみて」
優奈ちゃんが、もう一度背中に手を回す。一度縛って、簡単に抜けさせたことで、二度目はちょっと警戒心が消えてきている。
その両手首を耕平はもう一度縛り、今度は胸縄まで回した。優奈ちゃんの双つの二の腕が、ぎゅっと締められる。胸縄が締まる瞬間、優奈ちゃんは小さな溜息を吐いた。
「もう一度、外してみて」
優奈ちゃんが、ごそごそと体を動かす。
「外れないよ」
「でしょ? 肘を張るか、手首を下に下げるかしないと、手首の縄は外せないんだ。こうやって縛ると、二の腕も縛られて固定させられてるし、その縄に両手首は繋がれてるから、手首外そうとしても外せないでしよ?」
「うん」
「これだったら、大事な血管はどこも締まってないし、それでいてしっかり拘束させているから、ゆっくりプレイが楽しめるんだ。よくできてるでしょ?」
「うん」
「本当に拘束するだけなら、これだけの縄で十分なんだけど、ちょっと味気ないからね。それで」
「まだ縛るの?」
「すぐに解いてあげるから、もう少し我慢してね」
そして耕平は、優奈ちゃんの乳房の下に縄を這わして、閂を掛け、背中から首を挟むようにして縄を掛け、下の胸縄で乳房を持ち上げるようにして、高手小手縛りを完成させた。
「普通、ここまで縛るんだ。なんだか、縄のブラジャーみたいでしよ?」
「うん」
「ちょっとこっちに来て」
耕平は、優奈ちゃんを鏡の前に連れてくる。高手小手でしっかり固定された優奈ちゃんの上半身が写し出される。
「どう? 自分の緊縛姿。意外にきれいでしょ」
「ううん、よく分かんない」
分からないと言いながら、優奈ちゃんの目がちょっと潤んできているのを、耕平は見逃さなかった。優奈ちゃん自身が認めているように、確かに優奈ちゃんはMなんだ。
「SMというと、痛かったり熱かったりすると思うんだけど、で、実際にそういうプレイもあるんだけどね。SMの基本は羞恥プレイなんだよね」
「羞恥、プレイ?」
「例えば」
「あああっ! やめてっ!」
耕平は縄を掛けたまま、優奈ちゃんの服の前を広げた。ブラジャーを上に押し上げると、縄の隙間から優奈ちゃんの乳房がぷりっと飛び出してきた。
優奈ちゃんの乳首はもう、固くなっていた。
「どう? 恥ずかしいでしょ?」
「は、恥ずかしい」
「裸で縛られるより、服を着たまま縛られて、お乳とかあそこだけ露出している方がずっと恥ずかしいみたいなんだよね。優奈ちゃんもそう?」
優奈ちゃんの頭が、縦に揺れる。
「でも、Mの女の人はさ、そんな恥ずかしい格好されると、かえって昂奮したりするんだよね。乳首が固くなってきたりしてさ。優奈ちゃんは、どう?」
「あああっ!」
突然、耕平に乳首を抓まれて、優奈ちゃんは悲鳴を上げた。
「固くなってるね」
「あああっ」
耕平にお乳を揉まれて、優奈ちゃんの体がくねくねと動く。構わず、耕平は優奈ちゃんのお乳を揉み続ける。
優奈ちゃんは、諦めたように目を閉じた。
もしかすると、これでもう、優奈ちゃんは落ちているかもしれない。だが耕平は、大事をとってさらに作戦を進めていく。
「これが、まあ、一つの基本ね。今度は別のパターン」
言いながら、耕平は乳揉みの手を止めて、優奈ちゃんの拘束を解き始めた。優奈ちゃんは、えっ、と不思議そうに、耕平の動きを見ている。
「ごめんね。ちょっと、脱がすね」
言いながら、耕平は優奈ちゃんの上半身を裸にする。そこは、新人と言ってもプロのAV女優である。優奈ちゃんは素直に、耕平に脱がされるままになっている。
そして耕平は、優奈ちゃんの方に手を差し伸べた。
「今度は前に、両手を出してみて」
優奈ちゃんの目が悩む。
優奈ちゃんは、さっきの乳揉みで緊縛される歓びを感じかけていた。優奈ちゃんの目は、その歓びを知ってしまうことを怖れているようだった。本当に、癖になりそうだと思ったのかもしれない。
だがその一方で、十分に楽しむ前に歓びを中断されたことで、ある種の欲求不満を感じているようだった。もう一度縛られて、今度はもっとしっかり拘束されたい、もっとしっかり責められたいという思いが、優奈ちゃんの顔に滲んでいた。
緊縛に対する怖れと期待が、優奈ちゃんの中で葛藤している。
それを敏感に感じ取っていた耕平は、優奈ちゃんの決断が付く前に、さっと両手を引っ張り出してきた。
「ああっ、ちょ、ちょっと耕平くん」
「大丈夫だよ」
優奈ちゃんを安心させようということだろう、耕平は優奈ちゃんににっこりと笑い掛けた。
「形だけだからさ。プロの女優なら、これくらいのものは知ってて当然だし」
そう言いながら、耕平は優奈ちゃんの手首に縄を掛け始めていた。
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