今日は優奈ちゃんのデビュー作品の撮影の日である。撮影用に借りた倉庫の中で、スタッフがライトや小道具の仕込みに忙しく動き回っている。
監督は例によって辻本社長、社長の隣りには耕平と恭子の姿も見える。
「いやあ、楽しみだなあ、耕ちゃん。東大出のエリートの調教ビデオ、これ、絶対売れるよ。やったね。お手柄だよ」
はしゃいでいる社長に、耕平は硬い笑顔を返す。隣りの恭子も、ちょっと緊張の面持ちである。
「どうしたの? 元気無いじゃない」
「いや、なんでもないっす。ちょっと、緊張しちゃって」
「なんだよ。耕ちゃんらしくないじゃない」
「今回の仕事には、ちょっと力入っちゃってたんで」
「そうなの。こりゃ、ますます期待できるかな」
「ええ。期待してください」
「おっ! 耕ちゃん、強気じゃない! 頼もしいなあ」
だが、耕平は笑わない。恭子も、いつに無い真面目な顔で優奈ちゃんを遠目に見守っている。
撮影が始まった。
今日の設定は、優奈ちゃん演じるやり手キャリア・ウーマンが罠にはまってレイプされてしまうという設定である。
優奈ちゃんの勤める会社にライバル会社の産業スパイが入り込む。そのスパイの活動に逸早く気付くのが優奈ちゃんだが、スパイのしっぽを掴もうとして、逆に罠にはめられ、一味の男たちに輪姦され、写真まで撮られてしまう。
そして、写真を公表されたくなかったらこれこれの日にどこそこの倉庫に一人で来いと、呼び出された場面の撮影が今日なのである。
これまでのシーンは、まだ撮影されていない。役者のスケジュールと倉庫の関係で、先ずこのシーンから撮り始めることになったのだ。
「初めての作品の初収録にしては、ちょっと刺激が強過ぎるかなあ」
「違うだろ。優奈のいやらしいお○んこを、バイブでいじめてください、だろ」
さすがに辻本社長も、心配して耕平に相談してきた。
「大丈夫ですよ」
逆に耕平は、いつに無い強気さでそう太鼓判を押した。その結果が、今日の撮影になったのである。
「な、何をするの! やめてください」
優奈ちゃんは、ぎこちない調子で教えられたセリフをしゃべる。男優たちが、優奈ちゃんを取り囲む。
「きゃああっ!」
男優たちは、よってたかって優奈ちゃんのスーツをびりびりに引き裂いていく。シャーッ、シャーッ、と小気味良い音を立てながら、優奈ちゃんの服が裂けていく。
優奈ちゃんの服には、破りやすいように、予め小さな切れ目がいくつも入っていた。その切れ目をうまく利用しながら、男優たちは優奈ちゃんの服を手際よく破り取っていく。優奈ちゃんは、たちまち下着姿に剥かれてしまう。
ブラジャーも剥ぎ取った男優たちは、優奈ちゃんの上半身を床に押し付け、そして二人の男が片方ずつ。優奈ちゃんの脚を持ち上げて左右に割った。優奈ちゃんの下半身は、まんぐり返しの大開脚という、恥ずかしいことこの上無いポーズになった。
その大開脚の真ん中に、最後の男優が近付いていく。そして、これもまた小さな切れ目の仕込んであるパンティを、一気に引き裂いた。
「きゃあああっ!」
優奈ちゃんの本気の悲鳴が上がる。引き裂かれた下着の裂け目から、優奈ちゃんの一番恥ずかしい場所が飛び出してくる。
パンティを引き裂いた男優が、優奈ちゃんの股間に頭を突っ込んでくる。
「うううっ!」
男優は、本気で優奈ちゃんのクリトリスを舐め、膣の中に舌を差し込んできているのだ。優奈ちゃんは、苦しそうだとも気持ち良さそうだとも取れる切ない表情を浮かべ、頭を左右に振っている。
他の男優たちも、一斉に優奈ちゃんを責め始める。乳房を揉まれ、唇や耳朶にキスされ、優奈ちゃんは声を上げ続け、身をくねらせ続けている。何台ものカメラが、そんな優奈ちゃんを色々な角度から撮影していく。
「カァット!」
最初のシーンの撮影が終わった。凶暴そうに見えた男優たちは打って変わって大人しくなり、まんぐり返しにされていた優奈ちゃんをそっと床に寝かせてあげる。女性スタッフがタオルケットを持って飛んできて、、優奈ちゃんの体を包んであげる。
カメラが止まっても、優奈ちゃんは呆然として立ち上がることもできない様子だった。ブルブルと全身を震わせ、歯もガチガチとなっている。明らかに優奈ちゃんは、パニック状態に陥っていた。
その様子を見た辻本社長が、また心配そうに耕平に話しかけてくる。
「耕ちゃん、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫です」
「今日はもう、撮影終わった方が良いんじゃないかなあ」
「本当に大丈夫ですから」
「でも、レイプ・シーンはベテランの女優でも嫌がるんだよ」
「信じてください。撮影、続けてください」
「もしこれで、優奈ちゃんがもう降りるなんて言い出したら、耕ちゃん、責任取ってもらうからね」
「取りますよ。取りますから、撮影続けて下さい」
そこまで言われては、辻本社長も引き下がれない。結局、撮影は続行されることになった。
次のシーンは、緊縛された優奈ちゃんの鞭打ちシーンだった。
緊縛するのは、通称縄仁と呼ばれる緊縛師、片山仁だった。ベテランの緊縛師で、風格のある縄を打つと評判の男だ。
縄仁は、優奈ちゃんの両手を一つに括って上に吊るす。そして、両足を左右に引っ張って、両股を大きく開かせる。優奈ちゃんの体は人の文字に固定され、身動き取れなくなる。
縛っている途中、縄仁はふと、怪訝そうな顔をした。そして、耕平の方に一度だけ、チラッと視線を投げた。
縛り終えた縄仁は背広に着替える。鞭打ちシーンで男優を務めるためだ。
その着替えを、縄仁は耕平の横に運ばせた。そして着替えながら、耕平に話しかけてきた。
「あの女は、お前が調教したんだってな」
「はい」
「SMは駄目だって言ってた女だと聞いたが、本当か」
「はい」
「そうか」
そして縄仁は、耕平に向かってにやっと笑いかけてきた。
「腕を上げたじゃねえか」
「ありがとうございます」
撮影が始まった。男優たちが、全裸で緊縛されている優奈ちゃんの周りに集まってくる。
「気が付いたかい、お嬢さん」
「さあ、それじゃ新製品のデータの在りかを吐いてもらおうか」
「そんなこと、教えられる訳ないでしょ」
優奈ちゃんの背中に、バラ鞭が振り下ろされる。渇いた鋭い音がして、優奈ちゃんは悲鳴を上げる。
「さあ、お嬢ちゃんの体に聞いてみようか」
「どこまで耐えられるか、楽しみだな」
ピシッ!
「あああああっ!」
三発、四発、バラ鞭が振り下ろされる。その度に優奈ちゃんは悲鳴を上げ、身悶えする。
そんなシーンがしばらく続いた後、背広に着替えた縄仁が現れた。
「何をしているんだ、手前えら」
「あ、社長」
「どけ。拷問ってのはな、こうやるんだ」
さっきまで鞭を使っていた男優を押し退け、縄仁が優奈ちゃんの後ろに立った。
最初の男優が使っていたバラ鞭は、音は大きいがそんなに痛みの無いものだった。
だが、縄仁の手にしているのは一本鞭だ。本気で打てば、皮膚が裂け、肉が裂けるという代物だ。周りの男優たちは、驚いて縄仁の顔を見る。辻本社長も、慌てて撮影をストップさせようとする。
その辻本社長を、耕平が止めた。
「こ、耕ちゃん!」
「続けましょう、社長」
「つ、続けるったって、いくらなんでもいきなり一本鞭は」
「大丈夫です。大丈夫ですから」
縄仁が、最初の一撃を振り下ろした。ビシッと重い音がして、優奈ちゃんの背中が鳴った。
「ぐうぅっ!」
さっきまでの甲高い悲鳴とは全く違う、くぐもった声が洩れる。優奈ちゃんの両手が、吊るされている縄を掴む。
縄仁の二発目は、床の上に振り下ろされた。パアーンという渇いた音が倉庫中に響く。音に反応して、優奈ちゃんの体がびくっと震える。
さらに二発、縄仁は床を叩いた。その度にすごい音が響き、優奈ちゃんは震えて、まるで本当に打たれているような声を上げた。
「十発、連続していくぞ」
「ああっ!」
「力を入れろ。頭を下げろ。尻を突き出せ」
優奈ちゃんは、言われた通りにする。その背中に、縄仁の鞭が飛ぶ。
ビシィッ!
「ぐうっ!」
「数えろ」
「ひ、一つ」
ビシィッ!
「むううっ! ふ、二つ」
ビシィッ!
「あああっ!」
縄仁の鞭が、容赦無く優奈ちゃんの背中を襲う。
だが、さすがは縄仁である。一打ちごとに優奈ちゃんの背中に赤い鞭痕が走るが、皮膚は裂けていない。当たり所が悪ければ命に関わる危険な責めだが、縄仁の鞭は見事に急所を避けていた。
優奈ちゃんの肌が上気して、全身に汗が滲み出してくる。乱れ髪が汗で顔に張り付いて、優奈ちゃんの無残さを一層引き立てている。
ビシィッ!
「ぐううっ!と、十」
なんとか十発受け終えた優奈ちゃんの膝が、がくっと崩れた。もう体を支えていることができずに、両手を拘束している縄に体重を預けてしまった。
そんな優奈ちゃんの髪を掴んで、一人の男優が優奈ちゃんの顔を持ち上げさせる。優奈ちゃんが、ああっと悲鳴を上げる。
「どうだい、お嬢さん。もうしゃべる気になったかい?」
それは、今のシーンの最後のセリフだった。これに答えて優奈ちゃんが、もう許してくださいと言い、まだ吐かねえのかしぶとい女だ、ならばもっと酷い目に遭わせてやるでと言ってこのシーンが終わるはずなのだった。
縄仁の過酷な責めを見ているのに耐え切れず、早く終わらせてやろうという仏心だった。
ところが、優奈ちゃんが口にしたセリフは、打ち合わせと全然違っていた。
「もっと、もっと打ってください」
優奈ちゃんの髪を掴んでいた男優の顔が凍り付く。他の男優たちも、呆然として優奈ちゃんのことを見ていた。
優奈ちゃんの表情はもう、陶然として、自分の世界に入ってしまっていた。既に、撮影のことさえ、優奈ちゃんには分からなくなっているようだった。
男優と優奈ちゃんの間に、縄仁が割って入る。縄仁は、男優に代わって優奈ちゃんの髪を掴み、乱暴に持ち上げる。
優奈ちゃんの口から、ああっ、と切ない声が洩れる。
「いやらしい女だな、お嬢ちゃん。鞭の味を覚えて、体が疼いて仕方が無いんだろう」
優奈ちゃんの頭が、縦にかくかく動く。
「もう一度、言ってみな。どうして欲しいってか」
「打って、打ってください」
「鞭で打ってほしいんだな」
優奈ちゃんの頭が縦に揺れる。
「鞭で打ってほしいが、秘密を漏らすのは嫌なんだな」
優奈ちゃんの頭が縦に揺れる。縄仁がまた、優奈ちゃんの頭を乱暴に持ち上げる。ああっ、と小さく、優奈ちゃんの声が洩れる。
「そんな虫の良い話は通用しないんだってことを、今から体に教えてやるぜ」
そして縄仁は、再び鞭を床に打ち付け始めた。
一打ちごとに、優奈ちゃんの体が揺れる。まるで本当に打たれているように、悲鳴を上げ、身を震わせる。
辻本社長は、この様子を呆然として眺めていた。だが、はっと我に返ると、慌ててカメラマンのところに走った。
カメラマンは、優奈ちゃんに執り憑かれたように、フィルムを回し続けている。辻本社長が近付いてきたことを気配で感じていても、そちらに目を向けようともしない。
「社長、フィルムが続く限り、ノーカットの長回しでいくぜ。いいだろ?」
「そんなこと、当たり前だ! あと、どれくらい持つ?」
「三十分ちょっとだ。その後のフィルムを用意しておいてくれ」
「分かった!」
そして社長は、ADを本社に走らせた。あるだけのカメラを持ってこさせて、それにフィルムをセットし、フィルムの入れ替えの時間を節約するつもりなのだ。
「ああ! ああああっ! ぐううっ!」
再び優奈ちゃんの体を打ち始めた一本鞭の衝撃に、優奈ちゃんは悲鳴を上げ、身を戦慄かせる。
さすがに縄仁は老練である。もし、本気で打ち続けていれば、優奈ちゃんの体の方が耐えられなくなっていただろう。
そこを加減して、床打ちとか、力を抜いた形だけの鞭打ちなどで休息を入れさせ、優奈ちゃんの体力が続くようにさせている。
それでいて、責め自体が中断する瞬間は一瞬たりとも無いのだった。鞭で打たれていない時間は言葉で責められ、音で脅され、優奈ちゃんはずっと、トランス状態が続いていた。
「いくぞ! 今度は五発だ!」
「は、はい!」
そう言いながら、縄仁は空いている方の手を優奈ちゃんの股間に突っ込んだ。そして、手の甲を優奈ちゃんの股間に思い切り押し付けた。
優奈ちゃんの体が、撥ね上がる。
「い、いやああっ! そ、そこ、触っちゃ駄目ぇ!」
「力を抜くな! 頭を下げろ! こら、頭を下げんか!」
「駄目、駄目ぇ! い、いくう!」
「おい、誰か、この女の頭を押さえ付けろ!」
言われて、慌てて一人の男優が優奈ちゃんの頭を押さえる。暴れ回る優奈ちゃんの頭をぐうっと押さえて、動けなくする。
「ああああっ! い、いやあっ! 駄目えっ!」
「力を入れろ! 分かったのか! 入れろっ!」
「ああああっ! いやあっ! いやあああっ!」
優奈ちゃんの耳にはもう、縄仁の言葉は届いていないようにも見えた。
だが、突然、優奈ちゃんの背中にぐぐっと力が漲ってきた。鞭を受けられる体勢になっていった。
間髪入れず、縄仁の鞭が振り下ろされる。片手を股間に押し当てながら、もう一方の手で鞭を打つのである。器用な仕事であった。
「ぐふうっ!」
「女! 数えろ!」
「ひ、一つぅ!」
ビシィッ!
「あああっ! ふ、二つぅ!」
ビシィッ!
「ああああっ! 駄目、もう、駄目」
「三つだ!」
もう数を数えられなくなった優奈ちゃんに代わって、縄仁が数えた。
ビシィッ!
「あああっ! い、いく。もういく。ああ、御免なさい、……いくぅ」
「四つぅ! これで最後だ!」
ビシィッ!
「あああああああっ!」
優奈ちゃんの頭を押さえていた男優が、弾き飛ばされて尻餅を搗いた。腹筋をぴくっ、ぴくっと脈打たせながら、優奈ちゃんはぐったりとしている。
どうやら、縛られたまま気を失ってしまったようだった。
縄仁は、肩で大きく息を吐きながら、そんな優奈ちゃんに見とれている。
「カァット!」
辻本社長の声が響く。だが、そこで動き始める者は誰も居ない。誰もが厳粛な気分で、ぐったりと縄にぶら下がっている優奈ちゃんを見ていた。
パチパチパチ。
誰からともなく、拍手が起こる。それは、次第に広がっていき、やがて全員の大きな拍手の波となった。
自分に向けられている賞賛の嵐に気が付くことも無く、優奈ちゃんは吊るされている縄に体重を預けたまま、全裸の体をぐったりとさせていた。
「行こうか」
耕平が恭子に声を掛ける。
「あら、もう見ないの」
「もう十分だ。飲みにいこう」
「祝杯?」
「まあね」
そして耕平は、もう一度後ろを振り向いた。そして口の中で小さく、ありがとうと言った。
ようやく緊縛を解かれた優奈ちゃんは、まだ失神したままで、床にぐったり倒れ臥している。女性スタッフが汗を拭いてやったり、ガウンを着せ掛けてやったりする中、一同の拍手はまだ鳴り止んでいなかった。
腕を強く掴まれて、耕平が視線を戻す。耕平の方を真っ直ぐに見ている恭子と、目が合った。
「そんな優しい目で、優奈ちゃんのことを見ないで」
そして、耕平の腕に小さく爪を立てた。
「焼き餅焼きたくなっちゃうじゃない」
「馬鹿。俺たちはそんなんじゃないだろ」
鈍感で無神経な耕平の言葉に拗ねたような顔をしながら、それでも恭子は耕平に随いていった。
優奈ちゃんの状態から、もう今日の撮影は無理と判断したのだろう。スタッフは、後片付けを始めていた。
ざわざわと賑やかになり始めた撮影現場から、耕平と恭子の二人は静かに消えていった。
|
|
|