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 それから耕平は、ことあるごとに啓二を呼び出した。奈々美ちゃんと耕平、啓二の三人は、いつも一緒に行動する飲み仲間みたいな雰囲気になっていった。
 それとともに、奈々美ちゃんの様子が明らかに変わっていく。奈々美ちゃんは、話に出てきた引っ込み思案の奈々美ちゃんの本性を表し始めていた。
 三人で居ても、奈々美ちゃんはあまり話をしなくなった。ただ聞き役に回っているか、啓二と目が合ったりすると黙って俯いてしまうのだ。
 これは、完全なラブでしょう。
「女の子の恋心を弄んで、絶対良いこと無いわよ」
 腐れ縁の恭子は耕平にそう忠告するのだが、もう後戻りはできない。耕平は、作戦を第二段階に進めた。
 ある日、奈々美ちゃんがトイレに行っている間に啓二に耳打ちした。
「もっとスキン・シップ取ってよ」
「スキン・シップ? 体に触るんですか?」
「そう。どんどん触ってみて」
「大丈夫ですか? 奈々美ちゃん、怒らないかな」
「怒るかもしれないね。って言うか、怒らせてみせてよ」
 啓二には予め事情は説明してある。仕事のためだと割り切ったのだろう。啓二は本気で、奈々美ちゃんの体にお触りし始めた。
 奈々美ちゃんの表情が固くなる。
「啓二さん、止めてください」
「あれ、奈々美ちゃん、怒った? 冗談だよ、冗談」
 奈々美ちゃんの顔が、きっと恐くなる。
「啓二さん、私のこと、そんな風に見ていたんですね」
「そんな風って?」
「AVに出ている女だから、ちょっとちょっかい出したらすぐにやらせてくれるだろうって思っているんでょ?」
「いや、そんなことは思っていないよ」
「私、そんな軽い女じゃありません!」
 そして奈々美ちゃんは、バッグを抱えて立ち上がった。 
「失礼します!」
 そして、後ろを振り向くこともせずに立ち去ってしまった。
「ほら、怒らせちゃった。良いんですか? 本当に」
「良いんだよ、大丈夫、あれで良いんだ」
「よく分からないなあ。俺、奈々美ちゃんを傷付けちゃったんじゃないですかね。嫌だなあ、こんなの」
「大丈夫だから」
「奈々美ちゃんのこと、軽いなんて思っていませんよ。すごく真面目な子です。すごく良い子ですよ。そんな子にあんな失礼なことしちゃって。どうしよう、俺」
「本当に大丈夫だから。僕が責任持つから」
 実際、この展開は耕平の予想通りだった。
 私はそんな軽い女じゃありません。あれは奈々美ちゃんの本音だと思う。特に、AV女優になってしまった今は、自分のことを軽い女と見られたくないという意識は強いに違い無い。
 特に相手が、大好きな啓二となれば、奈々美ちゃんの自意識はボルテージ最高に上がっていただろう。
 でも、本当は啓二といちゃいちゃしたいんだ。抱き合ったり、キスし合ったり、もっと際どいことだって啓二としたいんだ。
 その気持ちを素直に出すことが、奈々美ちゃんにはできない。
 おそらく奈々美ちゃんは、今日家に帰って、一人で悶々としているに違い無い。もしかすると、啓二に抱かれることを想像してオナニーしているかもしれない。
(このまま一気に落すぞ)
「啓二、ちょっと耳貸して」
「え? 何ですか?」
 耕平は、次の作戦の内容を啓二に耳打ちした。啓二はそれを、一生懸命に聞いている。
 いよいよ、最終作戦の始動だった。

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