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 三台のカメラに囲まれながら、摩耶女王様はプレイを開始した。
 女王様の前に、女がひざまずいている。女は全裸で摩耶女王様の前に正座して、三つ指ついて深々と頭を下げている。
 三十を少し超えたくらいだろうか。贅肉はそんなに付いていないが、筋肉質の体は実際よりも太って見える。
 女の両肩には、十字架を逆さまにした逆十字が彫り込まれている。装飾的な蔦模様の美しい模様が、逆十字の枠で囲まれている。
 女はじっと頭を下げたまま動かない。女王様のお許しが出るまで、一時間でも二時間でも、そうやって待っているつもりなのだ。
 摩耶女王様は、鮮やかな色に編み上げられた籐椅子に座って、女を見下ろしている。
 時々、女王様はバラ鞭の先を女の体に触れさせ、くすぐるように這わせていく。鞭先の感触を感じるたびに、女は体をビクッ、と痙攣させ、鞭の擽りに耐えるようにお尻を小さく揺り動かす。
「あっ!」
 女王様のバラ鞭の柄をあごの下に差し入れられて、女は小さな声を上げた。
「顔を上げな」
 ようやく許しをもらった女が頭を上げる。女王様はその髪をぐっと掴んで、高く持ち上げた。
「ああっ!」
 女は悲鳴を上げて、頭を持ち上げた。このまま立ってしまった方がいいのか迷っているようだったが、女王様はそこまでさせるつもりは無いようだった。
「後ろを向くんだよ」
「は、はい」
 女は言われた通りにする。そして、両腕を背中に回すと、女王様が縄掛けしやすいように、体を少し前に傾ける。
 自分自身も縄師である耕平は、中央のカメラの後ろからじっと見詰めている。
 思わず溜め息が出た。相変わらず、摩耶女王様の縄裁きは見事なものだ。あっという間に高手小手が完成し、あっという間に女の体が宙に舞う。
「ああっ!」
 最初に吊り上げられる瞬間、女はまた悲鳴を上げた。女王様の縄で背中から吊り上げられて、正座の姿勢から一気に体が浮いた。慌てて足を伸ばしたが、もう爪先立ちでなければ足が床に着かない高さまで持ち上げられてしまっている。
 両脚の太腿のそれぞれに、縄が這っていく。これも、あっという間に完成してしまう。左脚を吊り上げられて、女がまた声を上げる。続いて右脚を吊られて、女の体は完全に浮き上がった。
「う、ううんっ!」
 左右別の吊り床に吊り上げられた両脚は、割り裂かれて閉じることができない。その大股開きの両脚の真ん中に、摩耶女王様がキスをした。縄で吊り上げられている全身をブルブルと震わせて、女が悶える。
「かわいいよ、美穂」
「あ、ありがとうございます」
「もっともっと、かわいい声を聞かせておくれ」
「ああっ! あああっ!」
 摩耶女王様がまた、女の股間にキスをする。ほんの僅かの間の中断が焦らしの効果を生んだらしい。女はいっそう激しく悶えて、身をよじる。
 そうやって愛撫を加えながら、女王様はもう、次の責めの準備を始めていた。手に持った低温蝋燭の先に、女王様はキスをしながら火を点けた。
 本格的な責めはまだこれからなのに、女はもう責めに酔い始めている。とろんとした目付きで、女はどこか分からない場所に視線を彷徨わせ始めた。

 撮影を終えて、摩耶女王様と耕平は、二人きりでスタジオに残って酒を飲み始めた。
「どうだったい、今日の撮影は」
「はい。勉強になりました」
 生真面目な耕平の言葉に、摩耶女王様が笑う。
「そう。勉強になったの。それは良かった」
「はい」
「今日のあの子、美穂ちゃんって言うんだけどね、あの子も最初は女王様だったんだよ」
「え? あ、そ、そうなんですか?」
「私があの子のマゾっ気に気付いてね、調教してやったんだよ。今ではもうマゾ専門でね。女王様に戻る気は全然無いみたいだ。面白いだろ?」
「え、ええ」
 なぜこの人は、自分にこんなことを話すんだろう。摩耶女王様をマゾに調教しようとしている耕平に向かって。
 もしかして、自分はこの人に挑発されているのだろうか。耕平はそう思った。自分のことを、マゾに調教できるものならやってみろと。そう言われているような気がした。
「なぜ、あの子がマゾだって気が付いたか、知りたい?」
「え? は、はい、それは、もちろん」
「タトゥーだよ」
「え?」
「あの子の両肩に入っている、あの立派な逆十字のタトゥー。あれを見た時、私はこの子はマゾだって確信したんだ」
「…………」
「あれだけ立派なものを入れるには、相当な痛みに耐えなけりゃいけない。その痛みを受けることを、あの子は自分で望んで、そして耐え切ったんだ。それはもう、立派なマゾの印じゃないか。そうだろ?」
「…………」
「だから私は、あの子を騙すようにしてプレイに引き込んで、思い切り責めてやったのさ。案の定、あの子は、被虐の歓びに目覚めて、今じゃ私にメロメロさ。面白いだろ?」
 なぜ、この人は自分にこんな話をするんだろう。耕平は戸惑いながら、摩耶女王様を見詰めた。
 女王様の腕には、さっきの女の子のタトゥーなど比べ物にならないくらいに立派な、龍の彫り物が背中の方まで伸びているのだった。

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