「ぐ、ぐわあっ!」
庭先で、男の悲鳴が聞こえる。妙徳尼と慈恵尼の二人が慌てて飛び出してくる。
血まみれになって悶絶しているのは、先ほど別室で尼たちを抱いていた百姓の一人だった。美照尼たちがいやらしい悪戯をされている間に、くノ一の一人がこっそり裏口から逃れさせていたのだ。
だが、男は今、袈裟懸けに斬られて絶命寸前の状態にある。残りの二人の農夫も、落ち武者風の男たちに腕を捕まえられて身動きできない様子だった。
「誰だえ、お前たちは?」
「へへへ、誰でもいいじゃねえか」
「麓の村でこの尼寺の話を聞いて、俺たちも好い目をさせてもらおうと思って、やってきたのさ」
妙徳尼は眉を顰めた。男たちのからだから、血の臭いがするのである。それは、今ここでのた打ち回っている農夫の返り血ではない。時が経って、腐り始めた血の臭いだった。
「お前たち、あの村の者を殺めてきたね」
「へ、抵抗しやがるから、思い知らせてやったのよ」
「無体なことを。神仏も、その非道を決してお許しにはなるまい」
「へ、抜かしやがる」
落ち武者の一人が、道に唾を吐きかけながら叫んだ。
「男に体を売って金や食い物を稼いでいる破戒寺の尼に、人の道など説かれたかあねぇや!」
「おう、婆さん。俺たちゃ、女に飢えて困ってるんだ」
「お前んとこの尼さんによ、ちょっと功徳を恵んでもらおうと思ってな」
要するに、この寺の尼たちを陵辱しようという訳だ。妙徳尼と慈恵尼は、意味ありげに顔を見合わせた。
「お布施になるものは、何かお持ちかえ?」
「お布施だあ?」
男たちは下卑た笑い声を上げた。
「そんなものぁ、一銭だってあるものか」
「逆に、俺たちの方がお布施をいただいていくぜ。この寺にある金、一銭残らずな」
「お布施が払えないと言うのなら、この寺に入れてやる訳にはいかないねぇ」
妙徳尼の言葉に、落ち武者たちの顔色が変わった。
「なんだと! この婆ぁ!」
「大人しくしていりゃあ、調子に乗りやがって!」
「かまわねえ、やっちまえ!」
落ち武者たちは、捕まえていた農夫二人の首を、一刀のもとに切り落とした。さっきから悶絶していた農夫の首筋にも、止めの一突きををくれた。尼たちを脅すように、三人の死体が転がされる。
「いくぞ!」
「年寄りは殺せ! 若いのは、裸に剥いじまえ!」
後ろの木立ちの中に隠れていた者も含めると、落ち武者たちは十数人居た。それが一斉に、寺の渡り廊下目指して殺到してくる。
その時、小さな読経の声が聞こえた。見るとそれは、妙徳尼が印を結んで、経を唱えているのだった。
今にも寺の中に飛び込んでこようとしていた落ち武者たちの足が止まる。その顔は一瞬、呆けたようになり、次の瞬間、恐怖で歪んだ。
「ぎ、ぎえぇぇぇ!」
「た、助けてくれぇ!」
口々に叫び声を上げながら、男たちが逃げ惑う。だが、皆腰が抜けてしまっているようで、うまく逃げることができないらしかった。
奥には、こちらは官能で痺れ切って腰が抜けてしまった美照尼が居る。美照尼は、何が起きているのか理解することもできずに、朦朧とした目付きでその光景を見ていた。
美照尼の横を、三つの影が走り抜ける。五人のくノ一のうちの三人が、庭の落ち武者の群れの中に飛び込んでいく。
残りの二人は、それぞれ美照尼と真砂の体を責め続けていた。膣の中に突っ込まれた指を蠢かされ、美照尼は鋭い声を発して、そのままいってしまった。隣りでは、既に何度も絶頂まで追い上げられている真砂が、涙を流しながら腰を振り続けている。
外に飛び出してきた女忍者の一人が、口の前で指を短く振る。そして目の前の男に思い切り息を吹きかける。
「ぎゃああっ!」
くノ一の息は炎となって男の身を焼いた。男は瞬時に火達磨となって燃え上がった。
二人目のくノ一は、指先から銀の糸を投げた。
糸は鋼でできている。糸が舞うたびに、男の首が切断されて飛び、腕が落ちて血潮がしぶく。
三人目のくノ一の武器は濡れ紙だった。
それは、相手の口と鼻を同時に塞ぐ。息ができなくなった男たちは必死になってその紙をはがそうとするのだが、どうしても剥がすことができない。
結局男たちは、悶絶して窒息死していくのだった。
野党が殲滅されるまで、ほとんど時間は掛からなかった。百姓たちの死体も含めて、寺の庭は男の死体で一杯になった。生臭い血の臭いが、寺の中にまで流れ込んできた。
「片付けよ」
「はっ!」
くノ一たちにそう命じると、妙徳尼は部屋の中に戻ってきた。そこには、青息吐息の美照尼と真砂が横たわり、荒い息を吐いている。
「さあ、邪魔者は居なくなった。それじゃ改めて、お前たちの体をゆっくりと嬲ってやろうかねえ」
美照尼は小さく頭を振っていやいやをしたが、下半身は痺れて身動きが取れないらしかった。隣りの真砂はすでに忘我の状態に陥っていて、もう誰にいたぶられている訳でもないのに、腰だけを小さく振り続けていた。
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