「透かし彫りじゃ。女が極度の性的昂奮を感じている時だけ、この文字が浮かび上がる」
驚きに目を剥いている軍兵衛を見ながら、久秀は言った。
「そこに書かれている場所に、本物の平蜘蛛の釜を隠してある」
「本物の? それでは、今このお城に置いてある釜は……」
「偽物じゃ」
二人の話に割って入ってくるように、お清の手が軍兵衛の袴をぐっと握り締めてきた。そして、軍兵衛の膝を這い上がってこようとしている。
「じゃが、その文字だけでは正確な場所は分からない。儂の側室で、今は宿下がりさせている紗江の背中にもう一つ、透かし彫りを彫らせた。眠り薬で眠らせて彫ったので、紗江はそのことを知らぬ」
「は、はあ」
ものすごい力でしがみ付き、押し倒そうとするお清を持て余しながら、軍兵衛は辛うじて答えた。
「紗江の背中の図面と、お清の背中の文字とが一つになって、初めて釜の隠し場所が特定できる。軍兵衛、お前はこのお清を伴って城を出て、この惚れ薬を使ってお紗江の背中の図面を読み取り、平蜘蛛の釜を掘り出してほしいのじゃ」
「その釜を、どうせよと」
「上杉謙信に献上せよ」
「上杉殿に」
「武田信玄亡き後、信長の天下統一を阻む力があるのは謙信を置いて他に無い。信長に、平蜘蛛の釜は渡さぬ。お前の手で、あれを謙信に届けてくれ。頼むぞ」
「は、はあ」
久秀は、懐から一通の書状を取り出し、それを床に滑らせた。
「この手紙を添えて、謙信に渡すのじゃ。頼んだぞ」
「ぐ、ぐうっ!」
軍兵衛は返事ができなかった。すっかり欲情し切っているお清が、軍兵衛の腰にしがみ付いてきたからである。細い体からは想像もできないような強い力で、軍兵衛は押し倒されそうになっている。
今のお清に女忍者としての意識はまるで無い。とろんとした目は焦点も定まらず、腕は軍兵衛の首に巻き付いてものすごい力で軍兵衛に抱き付いてくる。いや、軍兵衛を抱き寄せようとしている。
「こ、これ! やめぬか、女!」
お清は軍兵衛の口を吸おうと迫るが、もう少しのところで軍兵衛に拒まれ、口を重ねることができない。女は舌を長く出し、その舌先で軍兵衛の口を犯そうとする。
とうとう、軍兵衛が負ける。女の腕に抱き締められ、唇を唇で塞がれる。軍兵衛はむむうっ、と呻き声を上げるが、明確な言葉を発することはできなかった。
お清の口付けは長く、執拗だった。赤い蛇のようなお清の舌が軍兵衛の唇の裏をちろちろと舐め、舌先を擽り、口の奥を舐め回した。
「むうっ! むむむうっ!」
軍兵衛はしきりに呻き声を上げ、身悶えした。本当なら、こんな無礼なことをするくノ一など、舌を噛み切ってやり、手討ちにしてやるところだ。だが、主君松永久秀の使っている忍びであることを考えれば、そんなことはとてもできない。
お清は軍兵衛の唇を塞いだまま、片手で軍兵衛の袴を脱がせにかかる。軍兵衛は慌ててその手を押さえようとするが、お清は手際良くそれを脱がせてしまい、ついでに褌まで奪い取ってしまった。
「お清」
松永久秀は、例の壷を滑らせるようにしてお清の手元にやる。お清は中の軟膏を指先に取り、軍兵衛の股間に塗り付けていった。
しばらくは何事も無かった。だがやがて、軍兵衛は体を震わせて身悶えた。
「く、くうううっ!」
軍兵衛の股間が、かっと熱く燃える。魔羅が固く膨張して反り返った。
軍兵衛の変化に気付いて、お清はようやく口を離した。淫婦の顔をしたお清は、半ば手に落ちかけている獲物を眺めるように見詰めた。
「お、お清、儂に何をした?」
「堪らぬじゃろう」
お清に代わって、久秀が答える。
「この薬を塗られると、男も痴れ狂う。構わぬ、軍兵衛、お清を抱け」
「あああっ!」
お清は軍兵衛の胸元をはだけさせ、男の小さな乳首を強く吸った。もう一つの乳首を、指先で強く抓む。軍兵衛は、まるで女のように声を上げた。
「お、お清!」
「あっ!」
堪らず軍兵衛は、お清を後ろに押し倒す。お清は無様に、後ろに尻餅を搗いた。
軍兵衛は、お清の両足首を持って左右に乱暴に割り裂いた。お清は悲鳴を上げると、恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
お清がそうであるように、軍兵衛もまた、久秀の存在をまったく忘れてしまっていた。今の軍兵衛は、女を犯すこと以外に興味を持たない、獣と化していた。
いきり立った魔羅を、すでにビショビショに濡れているお清の膣に宛がう。そして軍兵衛は、思い切り腰を突き出した。
「ぐううっ!」
お清は背中を反らせて、声を上げた。そして腰を突き出すようにして、自ら軍兵衛の魔羅を飲み込もうとする。
「お清!」
「ぐ、軍兵衛様!」
軍兵衛とお清は、燃えるような目で見つめ合った。何度も唇を重ね、舌を絡め合った。その間も、二人の腰はお互いを求め合い、激しく動き続ける。
松永久秀は、二人の激しい情交を冷ややかに見詰めている。
「今日は気の済むまで抱き合うが良い。そして明日、お前は壷の薬と儂の密書を携え、お清と二人で城を出るのじゃ。そして壷の薬を使って紗江の背中の絵図を写し取り、平蜘蛛の茶釜を手に入れよ。それを上杉謙信殿に献上するのじゃ。分かるな?」
軍兵衛もお清も、久秀の言葉に答えない。ただひたすら、お互いの体を求めて腰を動かし続けている。
久秀は一人北叟笑むと、そっと立ち上がり、そして出て行った。襖が音を立ててピシャンと閉じられる。
「おおっ! おおっ! お、お清!」
「ああ、軍兵衛様! 軍兵衛様!」
久秀が出て行ってからも、軍兵衛とお清の痴態は延々と続いていた。
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