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 寺から少し離れた山小屋の中で、軍兵衛は目を覚ました。そばにお清が座っている。どうやら、軍兵衛の看病をしてくれていたらしい。
 襲ってきた女忍者は、少し離れた場所に、縛られて転がされている。背中の傷は応急処置を施されていて、口には猿轡を噛まされている。
 顔の頭巾を剥がされて露わにされた顔は、なかなかの美人である。年はお清よりも少し若いかもしれない。切れ長で、いかにも意志の強そうな顔をしている。
「気が付かれましたか」
「儂はどうしていたのじゃ」
「あの者の幻術に掛かったのです。丸一昼夜、お休みでした」
「そうか。どうりで、体の疲れがすっかり消えているわ」
 呑気なことを言いながら、軍兵衛は身を起こし、転がされている女忍者を見た。
「この者、一体何者であろうか」
「どうやら、あの寺を警護していたものと思われます」
「あの寺を?」
「お休みの間に少し探ってみましたが、他の方角にも、忍びが潜んでいるようです」
 軍兵衛はぽかんとしている。一体、こんな山奥の荒寺に、そんな警戒をしなければならないどんな理由があると言うのか。
 お清は、そんな軍兵衛の様子をじっと見ている。
「あの寺、普通の寺ではありますまい。うかつに近付くのは危険でございましょう」
「厄介なことになったな」
 紗江に会って、松永久秀から預かった惚れ薬を使って背中の絵図面を浮き出させ、平蜘蛛の茶釜を手に入れる。そこまでは、児戯に等しい簡単な仕事のはずだった。問題は、最後に上杉謙信と接触する手立てだけで、そこまでの仕事に困難は無いと思っていた。
 だがまだ、紗江と接触することさえできていない。それどころではない。怪しい尼寺の中で、紗江がまだ生きているのかいないのかさえ、心許無い。
「あのくノ一、何かしゃべったか」
「そのようなことは、軍兵衛様がお目覚めになってからと思い、まだ何もしておりませぬ」
「分かった。ならば、儂が訊いてみよう」
 軍兵衛は立ち上がり、そばに転がっていた棒切れを取り上げた。それで打って、女に白状させようとするつもりらしい。
「猿轡を取れ」
「なりませぬ。今それを取ってしまえば、あの者は舌を噛み切って自害しましょう」
「しかし、それでは何も話させることができぬではないか」
 お清はそっと軍兵衛の耳元に近付き、甘い息を吹き掛けるようにして、そっと耳打ちした。
「あの薬をお使いなさいませ」
 軍兵衛が目を向けると、お清はちょっと顔を赤らめている。自分自身がその効果で痴れ狂ってしまった日のことを思い出したのだろう。
 確かに、壷の薬はまだ、十分にある。女忍者の拷問用に用いても、それで足りなくなることはあるまい。
「分かった。お清、あの女を押さえろ」
 お清はくノ一の上半身を抱き起こすと、後ろから羽交い絞めにした。女忍者の乳房が、お清の腕の下で押し潰される。
 軍兵衛は一つに括られているくノ一の膝の上に乗り、そして袴の紐を緩め始める。
「ぐうっ! ぐぐぅっ!」
 忍びとは言え、そこは妙齢の娘である。一番恥ずかしい場所を露わにされようとしていることに気付き、激しく身悶えする。だが、軍兵衛は構わず、袴を膝の辺りまで下げてしまう。うっすらとした女の恥毛が曝け出される。
 くノ一は辛そうに顔を背けた。首筋の辺りがうっすらと朱に染まった。
 軍兵衛は、壷の薬を指先に掬い取り、女の割れ目の辺りに擦り付けた。くっ、と声を上げて、女の体がぴくんと動く。
「なかなか、感じやすいたちのようだな」
 女忍者は、辛そうに目を閉じる。
 軍兵衛は、何度も何度も指を動かし、薬を丁寧に擦り付けていく。くノ一は、その淫靡な感覚に必死で耐えている。
「くうっ!」
 くノ一は突然身震いして声を上げた。腰がくいっと後ろに引ける。軍兵衛は指の動きを止めて、お清を見上げた。
「薬が効いてきたようだな」
「そのようでございますな」
「もう、猿轡を取ってもいいかな」
「それはまだなりませぬ」
 改めて軍兵衛は女忍者の様子を見る。忍者はくねくねと腰をくねらせ、荒い息を吐き、しきりに頭を振りたくる。どうみても、女は欲情に身を焦がしているように見える。
 だがお清は、完全に理性が痺れてしまっている状態にはまだなっていないと見ているようだった。忍びとしての使命感も何もかも忘れ果て、ただの欲情した牝と化するまでには、まだ時間が掛かると見ているようだ。
 やがて、くノ一の目付きが虚ろになってきた。呻き声の中に甘えた調子が混じり始め、まるで男のものを迎えているように腰が前後に動き始めた。
「もう良いのではないか?」
 軍兵衛は再び、お清に聞く。今度はお清も、首を縦に振る。
「よろしゅうございましょう」
 軍兵衛が、猿轡を剥がすと、くノ一はいきなり軍兵衛の唇に唇を押し当ててきた。
「抱いて、抱いてくださりませ」
 相手が敵であることも忘れて、くノ一は軍兵衛に情けを求めてきた。



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