もう、夜はとっぷりと暮れている。けものに襲われない用心に焚き火をしながら、軍兵衛とお清が、これからのことを話し合っている。
痴れ狂った咲と香奈は、まだ愛し合っている。もうかれこれ半日にもなるが、二人の愛欲は尽きることが無いようだ。
軍兵衛は悩んでいた。
五人の忍者のうち、一人は死んだ。二人はこうして虜にし、淫欲地獄の底で悶え狂っている。残る忍者はあと二人だけだ。
問題は、その二人をどうするかだ。
お清は、香奈に使ったのと同じ手を使えば良いと言う。虜にした二人を放ち、咲と香奈に残りのくノ一を捕えさせれば良いと言うのだ。
だが、軍兵衛は気が進まない。それで全て美味く運ぶというのは、あまりに簡単過ぎる気がする。
「例えば、あの二人を取り返されては元の黙阿弥だ。薬が切れ、蛭が死ねば、正気に戻ってしまう」
「取り返される怖れがある時は、私が二人の始末を付けます」
「ううむ」
だが、残りの二人が、それを黙って見過ごしてくれるだろうか。お清の作戦には、どこかに甘さがあるような気がする。
その時、二人の背後で声がした。
「お、お前ら……」
声に驚いて二人が振り返る。そこに立っていたのは、香奈であった。全裸の香奈の股間からは、大量の血が滴り落ちていた。お清の眉間に、縦皺が寄る。
「蛭が潰れたか」
どうやら香奈という忍びは、相当の名器であるらしい。絶頂に達した瞬間、香奈の膣の締め付けで、蛭が押し潰されてしまったらしかった。香奈の股間から流れ出してきているのは、蛭の体の中に吸い取られていた血が溢れてきたものだった。
膣を中から刺激する、蛭の圧迫感が消えた。陰核に塗り込めておいた惚れ薬の薬効もとうに切れている。それで香奈は、正気を取り戻してしまったらしい。
だが、半日近く刺激され続けていた体にまだ力が戻ってきていないことは、香奈の足元が覚束ないことから見て取れる。
「お前ら、生かしてはおかぬぞ」
唇の近くで、指を振る。香奈の口から、炎が飛び出してくる。軍兵衛とお清は飛び退り、それをよけた。
忍びであるお清の動きよりも、軍兵衛の方が捕えやすいと判断したのだろう。香奈は軍兵衛の逃げた方に体を向け、再び指を振った。
激しい炎が軍兵衛を襲う。軍兵衛は辛うじてこれをよけたが、袴の裾に火が燃え移った。
「く、糞!」
軍兵衛は慌ててその火を手で叩き落とす。放っておけば、軍兵衛はたちまち火達磨になっていたはずだ。
香奈が、三度指を振る。今の軍兵衛に、三度目の攻撃を避ける余裕は無い。次に香奈の口から火柱が飛び出してきた時が、軍兵衛の最後だと思われた。
その時、お清が香奈に何かを投げ付ける。
やはり香奈は、まだ本調子ではなかった。もしいつもの香奈なら、投げ付けられたものの正体に気が付き、攻撃を中止したはずだ。
お清が投げ付けたのは、火薬玉だった。香奈の口から飛び出してきた炎が軍兵衛に達する前に、凄まじい爆音とともに、香奈の上半身が弾けた。残った下半身ははふらふらと少し踊り、そしてばたりと後ろ様に倒れて、そのまま動かなくなった。
「大丈夫ですか、軍兵衛様」
「ああ、なんとか大丈夫だ。……お清」
「はい」
「この通りだ。簡単に捕えられたはずのお香奈に、儂はもう少しで殺されるところであった。相手を見くびってはならぬのだ」
お清は何か言いたそうな様子だったが、言葉を呑み込んだ。
「分かりました。咲の始末も、今付けましょう。残りの二人に対する手立ては、また考えます」
「ああ、そうしてくれ」
お清が立ち上がり、目の前で弾け飛んだ香奈の様子をぼんやりと見ている咲に近付いていった。咲はまだ、頭が朦朧としているようで、目の前で香奈が死んだことに対して、何の感情も動いてはいないようだった。
近付いてきたお清に向かって、咲はちろりと舌を覗かせる。咲の目から見れば、お清は咲を抱くために近付いてきたのだとしか思えぬらしかった。
その咲の鼻口に、お清は濡れ紙を貼り付ける。それは咲がいつも使っている、必殺の暗器だった。
「く、くうううっ!」
呼吸ができなくなって、咲は目を白黒させて悶える。紙に穴を開ける刃物を求めて必死で懐の辺りを探る。
だが、全裸の咲には、刃物を潜ませた懐は無い。
「くふうっ! むむうっ!」
あまりの息苦しさに、咲は体をばたばたと蠢かせる。大きく開いて踏ん張った両脚の付け根で、咲の陰核と膣口が丸見えになっている。恥毛が風に揺れ、乳房が男を誘うように揺れるが、今の咲には、自分がいかにはしたない格好で悶えているか、意識することさえできない。
「ぐふうっ! ぐうっ!」
溺れる者は藁をも掴む。咲は落ちていた小枝の先で濡れ紙に穴を開けようとする。だが、枯れ枝はぽきぽきと折れて、空気穴を穿つことができない。
とうとう咲は、白目を剥いてひっくり返ってしまった。しばらくの間、全身をぴくぴくと痙攣させていたが、やがてまったく動かなくなってしまった。
軍兵衛は懐から紙を取り出し、火柱の香奈、濡れ紙使いの咲の二人の名前を消した。
残るくノ一は、あと二人となった。
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