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 妙韻寺に向かう山道を、供を連れた女が一人、登っていく。
 女の夫は石田三成に仕える武将であった。関ケ原の戦いの折りに夫は戦死し、家は徳川によって断絶された。
 女はこの夫の菩提を弔うために、この寺に入山することを選んだのである。

 寺の住職は、美照尼と呼ばれる尼僧であった。もう初老の年に近付いているが、若い頃には相当な美人だっただろうと思わせる整った顔立ちをしている。時々、女の胸元やうなじを盗み見る尼の視線には、ぞっとするほど妖艶な色気がある。その目にじっと見詰められて、女の顔が赤くなる。
 女は、三人の侍女を連れている。いずれも若いが、立ち居振る舞いから、それなりに武道の心得があることが知れる。
 尼の横には春麗尼と呼ばれる尼、そしてこちらはまだ髪を下ろしていない真砂と呼ばれる女が控えている。この二人も、美照尼とほぼ同年輩かと思われる。
「分かっているとは思いますが、この寺に入るからには俗世のことは全て断ち切ってもらわねばなりませぬ」
「はい。心得ました」
「心得たと言うが、これはなかなか難しいことじゃぞ。これまで生きて培ってきた誇りも、しがらみも、すべて捨てていくことが、できるかえ?」
「はい」
 言葉少なではあるが、女の覚悟は固いらしい。
 美照尼の目が、獲物を狙う猛禽類の目になる。
「それでは、その覚悟とやらを見せてもらおうかの」
 春麗尼と真砂が、女の左右に来て、女の腕を取る。
「あ、これは一体、何をなさるのです?」
「お前の覚悟を見せてもらうのよ」
 そして美照尼は、女の着物の前をさっと開けさせた。あっと叫んで女は身を捩って乳房を隠そうとするが、左右から腕を掴まれて身動きできない。美照尼の、年の割には美しい指で乳房を捏ねられ、女は切ない声を上げた。
「おのれ! 何をする!」
「無礼は許しませぬぞ!」
 懐剣に手を掛け、立ち上がる侍女たちの前に、天井から次々と忍び装束の女たちが現れる。人数は九人。侍女一人に三人の計算で、さすがに侍女たちはそれ以上前に進み出ることができない。
「ああっ! い、嫌!」
 首筋に唇を這わされて、女は悲鳴を上げる。体をぶるぶるっと震わせる。
「俗世の迷いをすべて捨て去るのじゃ。誇りも、しがらみも、すべてな。ほれ、このように」
「あああっ! だ、駄目ぇっ!」
 乳房を揉まれながら、耳に息を吹き掛けられる。横から伸びてくる手も、女の内腿や背中を撫で回していく。
 体のあちこちを触り回され、女は次第に錯乱していく。美照尼たちの愛撫に、体を反応させていく。
「あ、あ、だ、駄目ぇ」
 横の二人が、女の着物を剥ぎ取っていく。口では拒絶しながら、体が痺れ切って抵抗できない。
 ふと気が付くと、女の回りでも修羅場が起こっていた。
「ああ、駄目ぇ」
「お願い、もうやめてぇ」
 女が連れていた侍女たちも、それぞれくノ一たちに着物を剥がされ、両脚を大きく開かされて陰核を愛撫されている者、左右から乳首を吸われ、身を震わせている者。四つん這いにさせられ、お尻の穴と膣を同時に責められている者、嬲られ方はそれぞれだか、皆一様に顔を赤らめ、陶然として愛撫に身を委ねている。
(ああ、もう駄目)
 女は哀しげに目を閉じた。
 あの三人の侍女は、もしもの時のために選りすぐった、武芸の達人ばかりである。その三人があのように淫らな悪戯をされ、悶え狂っている。あの者たちの助けはもはや期待できない。こんな山奥の尼寺に、他に救いの手を差し伸べてくれる誰かが訪れてくるとも思えない。
 女は、この尼たちの辱めを、受け入れるしかないのだ。
 だが、その諦観には、不思議な甘美さがあった。
 どうしようもなく、この美しく年を取った尼に身を委ねるしかないのだと考えると、膣の奥が熱くなってくる。愛液がじわっと滲んでくる。
 女は無意識に胸を反らせ、美照尼の愛撫の手に乳房を押し付けていった。
 女の変化を見てとった美照尼は、にやりと笑った。そして、女の唇に唇を押し当てた。
 女は夢中で美照尼の唇を吸い、舌を絡ませていく。
 尼寺の中の淫らな声は、いつ果てるともなく続いていた。

 尼寺に残された美照尼は、いつしか妙徳尼と同じことをし始めていた。いや、その規模に於いて、美照尼は妙徳尼以上のものを作り上げた。
 妙徳尼が使っていた忍びは五人だけだったが、美照尼は二十人近くのくノ一を使っている。初期から居て高齢になってきた忍びは引退させ、尼の束ねをさせるようにした。
 忍びたちには、寺の警護と同時に、狩りをさせる。尼たちには畑を作らせ、家畜の世話をさせ、自給自足に近い体制を作り上げた。
 もちろん、村人に体を提供して収入を得ることも、以前通りに続けている。いつしか妙韻寺は、外の支配から独立した、治外法権的な場所に育っていった。
 毎夜妙韻寺から聞こえてくる嬌声を、村人たちは皆、聞こえぬふりを決め込んでいた。
 この、美照尼の作った自治都市がいつまで続いていたのか、正確な記録は残っていない。

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